「うちのハムスターは私を覚えているのかな」「呼んでも来ないのは、名前が分からないから?」。一緒に暮らしていると、小さなしぐさの意味が気になりますよね。
ジャンガリアンハムスターでは場所や物の記憶が、ゴールデンハムスターでは相手の識別が、それぞれ研究されています。ただし、これらの研究だけで「人間の何歳相当」か、名前を理解しているかまでは判断できません。
研究で分かっている範囲を押さえながら、飼い主への反応と、安心して過ごしてもらう接し方を見ていきましょう。
- 人間の年齢換算で断定せず、記憶や認識を個別に見るハムスターの能力
- 条件をそろえた実験で分かった場所と物の記憶
- 飼い主への慣れと名前の理解を分ける見方
- においと活動時間を尊重する接し方
ハムスターの知能はどれくらい?研究で分かる記憶と認識
人間の何歳相当?知能の数字より「何を覚えられるか」

ハムスターの知能について、「人間の1歳程度」「2歳程度」と断定できる根拠は示せません。ここで紹介する研究も、人間の子どもと同じ試験を受けさせて、年齢に換算したものではありません。
研究者が調べているのは、たとえば「直前に進んだ場所を踏まえて、次の行き先を選ぶか」「前に見た物と新しい物で、調べる時間が違うか」といった具体的な能力です。別の研究では、以前に出会った相手との経験に応じて、反応が変わるかを調べています。
そのため、「賢いか、賢くないか」の二択よりも、「どんな情報を覚え、どう行動に使うのか」と考えるほうが、研究結果に合っています。物の記憶が確かめられても、人間の言葉を同じように理解することまで証明されたわけではありません。
飼い主として知りたいのも、年齢の数字そのものより、こちらの存在に慣れるのか、生活の中の情報を覚えられるのか、という点ではないでしょうか。まずは、確かめられている能力を個別に見てみます。
場所を覚えられる?迷路の研究で分かったこと
場所に関する記憶は、ハムスターを対象にした迷路実験で調べられています。2013年の研究で使われたのは、シベリアンハムスター、つまりジャンガリアンハムスターと呼ばれる種です。
装置は、通路の先が左右に分かれるT字型の迷路。ハムスターが片側へ入り、中央の通路へ戻ったあと、次に反対側を選ぶかを記録しました。このような選び方を、直前の場所に関する情報を使う「空間作業記憶」の評価に利用しています。複雑な迷路の出口へ、どれだけ速く到着するかを競う試験ではありません。
明暗の周期に同調した生活リズムを持つ群では、研究上の午後遅い時間帯と夜間に、偶然の選択を上回る交互の選び方が見られました。一方、明るい時間帯の初めには、同じような成績が見られませんでした。記憶を使う課題の成績は、調べる時間帯にも左右されたのです。
この結果は、ハムスターが場所に関する情報を扱えることを示します。ただし、家庭で迷路に入れて一度動かなかったからといって、「記憶力がない」と判断するための基準ではありません。研究自体が、条件をそろえて複数の群を比較している点が大切です。
記憶はどれくらい続く?24時間後の物の識別

「すぐに全部忘れてしまうのでは」と思うかもしれませんが、ジャンガリアンハムスターの研究では、24時間の間隔を置いた物の識別も調べられています。
最初に同じ形の物を二つ置き、5分間自由に探索させます。その24時間後、前と同じ物一つと、別の新しい物一つを置いて、再び探索させました。新しい物をより長く調べる傾向を利用して、以前の物を覚えているかを評価する方法です。あらかじめ、使用する物への好みに大きな偏りがないことも調べています。
生活リズムが保たれた群では、研究上の午後の試験で、新しい物と見慣れた物を識別する成績が得られました。一方、朝の試験では同じ成績は得られていません。ここでも、何時間たったかだけでなく、試験の時間帯という条件が関わっています。
したがって、答えは「一定の実験条件では、24時間後にも物を識別する記憶が確かめられている」です。24時間は記憶の上限ではなく、この試験で設定された間隔。これを「飼い主も24時間で忘れる」「どんな出来事も必ず1日覚える」と読み替えることはできません。
物の記憶と、人との関係の記憶は、同じ試験で測られていないためです。
ゴールデンとジャンガリアンで知能に差はある?
ここで紹介する研究からは、ゴールデンとジャンガリアンのどちらが賢いかという順位はつけられません。対象となる種だけでなく、課題や実験条件も違うからです。
ジャンガリアンでは場所や物の記憶が調べられ、ゴールデンでは他の個体を認識する研究が行われています。これは「ジャンガリアンは場所だけ、ゴールデンは相手だけを覚える」という役割分担を意味しません。それぞれの研究で、何を調べたかの違いです。
| 対象 | 研究で調べたこと | 結果から広げすぎないこと |
|---|---|---|
| ジャンガリアンハムスター | T字迷路での選択、24時間後の物の識別 | すべての時間帯・状況で同じ成績になるとは限らない |
| ゴールデンハムスター | 前日に異なる経験をした相手への反応 | 人間の飼い主や名前の認識を直接試したものではない |
犬や猫など、ほかの動物との総合的な知能順位についても、これらの研究は答えていません。

種類選びや目の前の子の評価に、裏付けのないランキングを使わないようにしましょう。
また、人に抱かれることを好むかどうかも、ここで扱った記憶課題とは別の話です。Blue Crossの飼育案内では、多くのハムスターは持ち上げられることを好まないと説明しています。抱っこへの反応を、そのまま賢さの差に置き換える必要はありません。
ハムスターの知能を踏まえた接し方|飼い主や名前を覚える?
飼い主を覚える?においと慣れが大切な手がかり
オスのゴールデンハムスターを用いた研究では、相手の識別と、その相手との経験の記憶を示唆する反応が見られました。一方、飼育上の助言では、人の存在やにおいに慣れてもらう接し方が紹介されています。「ハムスター同士を見分ける研究」と「人間の飼い主との関係」は、区別して考えましょう。
コーネル大学の研究紹介では、オスのゴールデンハムスターに、前日に出会った二匹のオスを再び会わせています。一方は争いで自分を負かした相手、もう一方は争っていない相手でした。ハムスターは前者から逃げ、後者には近づく反応を示しました。
研究チームは、個体の認識と、その相手との経験の記憶を示唆する結果と説明しています。
この研究紹介では、ハムスターはにおいで個体を認識するとされています。ただし、人間の顔を見分ける能力や、飼い主だけを選ぶ能力を直接検証した実験ではありません。
家庭での関わり方について、Blue Crossの飼育案内は、手のにおいを嗅がせ、人の存在やにおいに慣れてもらう方法を示しています。「覚えているか」を顔への反応だけで確かめようとするより、においを確かめる時間を大切にしたいですね。
英国の研究支援機関NC3Rsも、触れる前に人のにおいや音を感じられるようにし、急な動きを避けることが、扱う際のストレスやかまれるリスクを減らすと説明しています。
名前を呼ぶと来るのは、言葉の意味が分かっているから?


名前を呼んだときにこちらへ来ても、それだけで「自分の名前だと理解している」とは判断できません。一方で、「ハムスターは名前を絶対に覚えられない」と言い切る根拠にもなりません。
大切なのは、音への反応、人への慣れ、言葉の意味の理解を一緒にしないことです。ハムスターが人の音やにおいを手がかりにできることや、人との接触に慣れることは飼育指針で説明されています。しかし、それは自分を指す名称として名前を理解していることの証明とは違います。
Blue Crossは、手からおやつを与えることを、人とのよい結びつきを作る方法として紹介しています。つまり、飼い主とのやり取りを考えるときには、呼びかけだけでなく、その場で何を経験しているかも大切です。ただし、この案内も名前を覚えたかどうかを検証した研究ではありません。
呼んで来たことは、うれしい反応として受け止めてよいでしょう。そのうえで、「名前を理解した証拠」とまで広げないこと。来ない日があっても、その反応だけで名前の理解や知能を判断する必要はありません。
なつかないときは知能を疑わず、起きている時間と接し方を見直す
手から逃げる、呼んでも出てこない、抱こうとすると嫌がる。こうした反応だけで、「覚えてくれない子」と決めつけなくて大丈夫です。Blue Crossは、多くのハムスターは持ち上げられることを好まず、昼間に休んでいるところを邪魔されて驚くと、かむ場合があると説明しています。



まず優先したいのは、十分に起きているときに関わることです。NC3Rsの飼育指針も、活発な時間帯に扱うことを望ましいとしています。人間が遊びたい時間に反応させることを、慣れたかどうかの試験にしないようにしましょう。
- ハムスターが十分に起きていることを確かめます。
- ケージに手を入れ、まずにおいを嗅いで慣れる時間を取ります。緊張しているなら、触ろうとせず手を置く段階にとどめます。
- 持ち上げるときは、体の両側から両手で包むように、そっとすくいます。
- 落下によるけがを防ぐため、膝やケージなどの面から高く離さずに支えます。
手が近づくことを怖がる場合、Blue Crossはトンネルや隠れ家に入ってもらい、それごと持ち上げる方法も紹介しています。直接手に乗ることだけを、関係ができた証拠にしなくてよいのです。
また、急な動きや大きな音は避け、触れる前にこちらの存在を感じられるようにします。「何日でなつく」と期限を決めるより、においを嗅げる、そばに手があっても過ごせる、といった段階に合わせて接してください。健康面に不安があるときは、知能や性格の問題と片づけず、獣医師に相談しましょう。
知能を試すより、探索・巣作り・採食ができる環境へ


ハムスターの能力に関心を持ったら、難しい課題を解かせることより、日常の中で探索や巣作りができる環境に目を向けてみてください。Blue Crossは、探索、トンネル掘り、巣作り、食べ物探しを、ハムスターが行えるようにしたい行動として挙げています。
具体的には、掘れる深さのある床材、探索できる幅のあるトンネル、眠るための囲われた隠れ家など。ここでの目的は、人間の目に分かりやすい芸を増やすことではなく、ハムスターが行う活動の機会を用意することです。「こうすれば知能が上がる」という効果まで保証するものではありません。
食べ物探しでは、Blue Crossが、1日分の乾燥フードをケージ内に散らしたり、その一部を床材の下に隠したりする方法を紹介しています。追加のおやつを増やす話ではなく、普段の食事を探して食べる機会にする方法です。
NC3Rsも、餌を散らすことは、自然な採食や貯食の行動を促すと説明しています。何秒で見つけたかを採点しなくても、食べ物を探す様子や運ぶ様子を観察できます。研究用の迷路を再現しなくても、日常の行動に目を向けるきっかけになります。
一方、刺激を増やすことばかりに偏らず、慣れたにおいも大切にしましょう。NC3Rsは、ハムスターがにおいの手がかりから環境の情報を得ており、それを取り去ることがストレスになり得ると説明しています。清掃では汚れた部分を取り除き、全体を掃除する際にも、汚れていない使い慣れた巣材を一部残す方針です。
Blue Crossの家庭向け案内でも、全体清掃時には汚れていない使用済み床材を一部戻すよう勧めています。清潔さを保ちながら、なじみのあるにおいを残すという考え方です。ハムスターの知能を暮らしに生かすとは、難しいことを覚えさせるだけでなく、何を手がかりに過ごしているのかを尊重することでもあります。
ハムスターの知能と接し方のまとめ
この記事のまとめです。
- ハムスターの知能を人間の1歳・2歳相当と断定せず、記憶や認識の能力を個別に考える
- ジャンガリアンのT字迷路研究では、明暗周期に同調した群で、時間帯によって場所の記憶を使う課題の成績が異なった
- 一定の実験条件では24時間後の物の識別が確認されたが、24時間が記憶の上限という意味ではない
- 異なる種・課題の研究から、ハムスターの種類別や他の動物との知能順位はつけられない
- オスのゴールデンを用いた研究では相手との経験に応じた反応が見られたが、飼い主の認識を直接調べた実験とは区別する
- 人の存在やにおいに慣れることと、自分の名前の意味を理解することは別
- 呼んでも来ない、抱かれるのを嫌がるという反応だけで知能を評価しない
- 十分に起きているときに関わり、緊張している場合は触らず手のにおいに慣れる段階から始める
- 探索や巣作りの環境を整え、1日分の乾燥フードを使った食べ物探しの機会を作る
- 清潔さを保ちつつ、全体清掃でも汚れていない使い慣れた床材や巣材の一部を残す
参考にした情報
- Spatial Memory and Long-Term Object Recognition Are Impaired by Circadian Arrhythmia and Restored by the GABAAAntagonist Pentylenetetrazole – PMC
- Cornell hamster study shows how our brains recognize other individuals | Cornell Chronicle
- Housing and husbandry: Hamster | NC3Rs
- Hamster Care | Wellbeing Advice | Blue Cross










